そこで、21句を選んで以下に掲載します。
なお、句の冒頭には句集『牛飼』のベージ番号を付しました。
季節を詠んだ句
春
P.14 苗床の息に濡れたる温度計
P.17 ぜんまいの二つのこぶし相そむき
P.28 鳥の巣があると手眞似をして招く
P.33 全くの蛙の闇となりにけり
夏
P.68 乾きたる音して麦の刈られたる
秋
P.93 秋の雨やまねば休む野良着脱ぐ
P.105 一水のかがやき走る花野かな
P.107 木犀の眞っ暗がりに匂ひけり
冬
P.125 雀影こぼるる縁や蒲団干す
P.132 誰も来ぬ所えらびて日向ぼこ
P.137 笹鳴のふと聞こえたる足を止め
P.152 庭枯れて歩るく処の決まりをり
P.154 年の瀬の用事いろいろみな愉し
酪農を詠んだ句
春
P.22 酪 農 に 転 業
春暁の靄流れ入る牧舎かな
P.25 春泥に牛乳垂らし集乳車
P.32 病む牛の泪拭きやる余寒かな
夏
P.57 汗の香の牛乳の香のシャツを脱ぐ
秋
P.101 病む牛に厚く敷きたる今年藁
P.117 搾乳の果てて銀漢濃かりけり
その他の句
新 年
P.5 復員の兄よ弟よ野良始め
句碑にある句 (春の部)
P.13 をりをりに余花(よか)の散り来る峡田(はけた)かな
(貝柄山公園南口の左隅にある句碑に刻まれています)
➜ 「松琴氏 俳人ながら牛飼である」(その4) 清田松琴のこと