杜甫の七言古詩からの一篇 「哀江頭」を掲載する。
句数に制限はなく、韻律・平仄も比較的自由である。
発達したのは初唐以後。
本詩は、内容的に 4句 + 8句 + 8句 に分かつことができるので、3分割して掲載する。
哀江頭
あいこうとう
江頭に哀しむ
・少陵の野老
杜甫の先祖は長安南郊少陵の出であり、杜甫は杜少陵とも呼ばれる。
・曲江
陝西省西安市(旧・長安)の東南にあった池の名。 曲江池ともいう。 漢の武帝が宜春苑をつくり、水の流れが「之」の字形に曲がっていたことから名づけた。 唐代には科挙(官吏登用試験)の合格者をここに招き宴を賜った。
・江頭
曲江のほとり。
・細柳新蒲
柳はヤナギ、蒲はガマ。 どちらの植物も春になると川沿いに細長い葉を茂らせる。
・霓旌(げいせい)
羽毛を五色に染めて綴った天子の儀仗の旗。
・南苑
唐代、長安の宮殿の南にあった庭。
・昭陽殿
漢の武帝がたてた宮殿の名であり、宮廷の女を住まわせた。 「昭陽殿裏第一の人」とは 玄宗の寵姫である楊貴妃のこと。
・輦(れん)
輿(こし)。 人が引く車。 手車。 また、特に、天子の乗る手引き車。
・才人
才能や知恵・人徳のすぐれた人。 「才子」に同じ。
・弓箭
弓と矢。
・明眸皓歯(めいぼうこうし)
美しく澄んだひとみと歯ならびのきれいな白い歯。 美人の形容。 この よく知られた言葉は、当詩が出どころである。
・遊魂
肉体を離れてさまよう魂。 「游魂」に同じ。
・渭水(いすい)
陝西省中部の黄河最大の支流。 渭河(いが)ともいう。 甘粛省南部の鳥鼠山から発し、東流して陝西省宝鶏に入り、西安、臨潼などを経て潼関県で黄河と合流する。
・剣閣
長安から蜀に入る道にある大剣山・小剣山の二つの山の要害。 閣道(かけはし)がかけられていることから。
・臆(むね)
いろいろな思いでつかえた心。 心の奥。
・霑す(うるおす)
ひたひたと一面にぬれる。
・江水江花
川のほとりに咲く花。
・黄昏
夕方。 たそがれ。
・胡騎
匈奴・突厥などの騎兵。