光明真言道標(鎌ケ谷市・佐津間) 文久4年(1864)造立 |
「南無大師遍照金剛」と文字が刻された石塔の上の方に、すでに薄れてきてしまっているものの、23文字の梵字が円く連なって陰刻されています。
これが「光明真言」です。
真言の最初の文字「唵」(オン) と 最後の文字「吽」(ウン) の間には、ダンダ(休止符)が置かれることがあります。
梵字を等間隔に円く並べる場合に、23文字よりは 24文字の方が並べやすいということがあるようです。
このダンダの文字を含めて数えた場合は、光明真言は24文字となります。
これについては、再度あとでふれることにします。
また、中央の部分にある5文字は「胎蔵界大日真言」といいます(後述)。
光明真言の部分の翻刻 |
後述するとおり、本石塔の「真言」には 「光明を放ちたまえ」という文言があるところから、「光明真言」と名付けられています。
英語では、「光明真言」は「Mantra of Light」というそうです。
「真言」は、密教において 仏・菩薩の誓いや教え、功徳などを秘めているとされる呪文です。
原語の呪文をそのまま音写して用いることが多く、「真言自体」には意味がないとされます。
「真言」は、別名を「陀羅尼」(だらに)、または「マントラ」といいます。
これらは、名称こそ異なっていますが、同じものを指しています。
「真言」は、このように実に多様な名前でよばれています。
また、「神呪」だけを取り上げても、 「じんしゅ」・「しんじゅ」・「じんじゅ」のように様々な読み方をされているようです。
また、「真言」は 以下のように3大別される場合がありますが、実際は「マントラ」という名を含め ひとつにして扱われ、区別されません。
❷ 数語からなるもの :
❸ 一、二字のもの :
ここでもう一度整理しておきましょう。
別名があまりにも多いため 思い切って省略すると、以下のようになります。
これは伝法阿闍梨位(でんぼう あじゃり い)という位に当たり、伝法灌頂(でんぼう かんじょう)を受けて、教法を伝授する位であり、密教の僧の最高位を示すものです。
「この世の一切を
光明神咒供養塔(印西市・瀬戸) 嘉永5年(1852)造立 |
鎌ケ谷市・佐津間の「光明真言道標」と同様なものが 、印西市・瀬戸にある「
真言(陀羅尼・神呪)の陰刻が、佐津間の「光明真言道標」よりもくっきりと残っています。
梵字の各文字の上端が 円盤の中心を向いて ぐるりと配置されている点が、佐津間の「光明真言道標」とは異なっています。
また、この石塔には、陀羅尼(真言)の 最初の文字「唵」(オン) と 最後の文字「吽」(ウン)の間に 句点〔休止符〕の文字(ダンダ)が はっきりと刻まれています。
「光明真言」の文字数は、「ダンダ」を含めなければ23文字であり、含めた場合は24文字となります。
光明神咒供養塔 光明真言(神咒)の部分 |
1 文字の配置
「光明真言」は、時計の最下部 6時の位置に当たる場所から時計回りに 23文字が円く配置されています。
なかには、「光明真言」の最初の文字「唵」(オン)が、12時の位置から始まっている石塔もあるようです。
2 各文字
3 唱え方
オン ア ボ キャ ベイ ロ シャ ノウ
マ カ ボ ダラ マ ニ ハン ドマ
ジンバ ラ ハラ バ リタ ヤ ウン
唵 阿 謨 伽 尾 盧 左 曩
摩 訶 母 捺囉 麽(麼) 抳 鉢 納麽(麼)
入嚩 攞 鉢 囉 韈 耶 吽
4 意味
オーン(聖音)、
フーン(聖音)
「五智如来(上記の五大如来)に光明を放ちたまえ」といった意味でしょうか。
以下により、CDに収録されている光明真言を試聴できます。
➜ HMV ONLINE 高野山真言宗 壇信徒勤行
5 胎蔵界大日真言
大日如来に祈るときの呪文であり、 中央 → 下 → 左 → 上 → 右 の順(「の」の字状)に読みます。
この5文字は、五大である「地 水 火 風 空」をあらわします。