(1)
きれいなビオラの花が咲いているのを見ました。
ビオラの一種 スミレ科 スミレ属(Viola) ビオラとは、園芸上では パンジーのうちの小輪・多花性種をさす総称 |
日本では、小輪のパンジーをビオラとよびますが、ご存じのように「Viola」は、スミレ属自体をさす名称です。
ギリシア神話によると、愛人イオのことを妻ヘラに知られそうになり、ゼウスは イオを牝牛に変えてしまいます。
その牝牛に、ゼウスが餌として食べさせるために つくったものがスミレ(ニオイスミレ)だそうです。
「viola」は、英語では 「violet」 です。
パンジー(英 pansy) 1 スミレ科 スミレ属 学名 Viola × wittrockiana |
パンジーは、かつてヨーロッパで厖大な交配を行って つくられたものであり、花色等が とても多様です。
日本では、「
種小名「× wittrockiana」は、雑種として種小名があることを示しています。
「wittrockiana」は、スウェーデンの植物学者 ウィットロックに因む名だそうです。
パンジー 2 花の大きさを測ったら、 上下 7cm ・ 左右 6cm ありました |
「パンジー」の名は、英語の「pansy」から。
「考え」や「思い」を意味するフランス語の「pensée」(パンセ)に由来するといいます。
パンジーが こう名づけられたのは、花が 頭をたれて物思いにふける人の顔のように見えるからだそうです。
(パンジーについては 2018.04.14に追記)
(2)
次は、同じスミレ属の植物です。
アメリカスミレサイシン(亜米利加菫細辛) 1 スミレ科 スミレ属(Viola) 別名 ビオラ・ソロリア 学名 Viola sororia 'Priceana' (「プリケアナ」) |
アメリカスミレサイシンは、名前からも分かるように外来種です。
花の大きさは3cmほど。
紫色だけの花のアメリスミレサイシンもよく見かけます。
また、白花のものもあるようです。
アメリカスミレサイシン 2 紫色の花 (2018.03.30 市内で撮影) 学名 Viola sororia 'papilionacea' (「パピリオナケア」) |
日本のスミレサイシンに似ていることから、原産地の名・「アメリカ」を前に付して命名したものだと思われます。
北アメリカ東部原産で 明治時代に観賞用に導入された多年草だとのこと。
逸出・野生化して繁殖し、帰化植物となっています。
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アメリカスミイレサイシンとスミレサイシンの種小名についてですが、前者の「sororia」(< sororius)は、以下によると 「塊になった、堆積した」という意味だそうです。
これが何を指しているのかは不明です。
花の形をいっているのだと思います。
こちらは、いつも使っている『植物ラテン語事典』(原書房 2014)にも載っていました。
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上に載せた2枚のアメリカスミレサイシンの写真には、それぞれ学名を付しました。
これらは園芸品種ですので、学名の構成は、
属名 + 種小名 + ' 園芸品種名 '
となっています。
園芸品種名の 'Priceana' (< Priceanus)については、以下の1000ページにわたる『植物学名辞典』に、 「19世紀のアメリカのアマチュア植物学者 Sarah "Sadie" Francis Price の」 と書かれています。
Price のミドル・ネームは、サイトによって、Francis または Frances と書かれていますが、女性なので Frances が正しいのではないかと思います。
'papilionacea' (< papilionaceus)という園芸品種名は、『植物ラテン語辞典』に 「チョウのような」という意だと書かれていました。
花の形を蝶に見立てて命名したのでしょうか。
これらの品種をよぶときには、「プリケアナ」、「パピリオナケア」と、園芸品種名が幅広く用いられています。
(3)
以下は、スミレ属以外の植物です。
ヤマブキ(山吹、棣棠) バラ科 ヤマブキ属 |
ハナズオウ(花蘇芳) マメ科 ハナズオウ属 |
シャガ(射干、著莪、胡蝶花) アヤメ科 アヤメ属 学名 Iris japonica |
ミヤコワスレ(都忘れ) 別名 野春菊、東菊 キク科 ミヤマヨメナ属 |