2014年7月30日水曜日

本埜の古刹(3) 龍湖寺(印西市・物木)

印西市(大字)物木213番地にある龍湖寺。
この周辺は明治時代の中頃まで物木村という地区でした。

寺は、田圃から連なる傾斜地を上がった やや小高いところに建っています。
前に取り上げた瀧水寺や龍腹寺と比べると、ずっと低い標高に位置している寺です(下図参照)。

本埜にある 寺名に〈龍〉がつく三古刹の位置 (色別標高図と合成)
国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものを利用

「龍寺」と 「湖」の一文字がついているのには、意味があるはずです。


山門の前には 左側に六地蔵が並んでいます


山門へとのぼる道


山 門 仁王門ではなく 美しい二階建ての門


門 柱  「曹洞宗  龍湖寺」とあります


境内に入ると正面には本堂、左手に大師堂が見えます


印西大師 第四十七番札所の大師堂


印西大師 第四十七番札所の扁額 右 側

本家 第四十七番札所は、熊野山 八坂寺 (くまのさん やさかじ)。
その御詠歌が そのまま扁額に書かれています。

 「花を見て  歌詠む人は  八坂寺(でら)  三仏じょうの  縁とこそきけ」


印西大師 第四十七番札所の扁額 左 側

こちらの扁額の方は判読が困難でした。


龍湖寺 本堂


本堂には 印西市指定文化財の「龍湖寺の絵馬」が掛けられています


本堂の横から境内を望んだところ


本堂側から山門に向かったところ


境内側から見た山門 2階部分は鐘楼(いまは梵鐘がありません)

 
龍湖寺から少し離れたところに印西市の本埜支所があります。
本埜支所の前には案内掲示板が置かれていて、本埜地区の地理的な概要を知るうえで大変便利です。
 
印西市本埜支所 印西市に編入前は本埜村役場


本埜支所前に置かれている 本埜地区の案内掲示板


上記の案内地図部分を拡大 (赤線の囲みを追加)



追 記 2014.08.01  (追加・修正 2014.08.15)

龍湖寺があるのは、明治時代中頃までは物木村。
Wikipedia によると、1889年(明治22年)4月1日の町村制施行に伴い、笠神村、中根村、滝村、龍腹寺村、物木村、荒野村、角田村、惣深新田飛地が合併して印旛郡本郷村(ほんごうむら)が発足。

同年同日、16の新田が合併して印旛郡埜原村(やわらむら)が発足。

1913年(大正2年)4月1日、本郷村と埜原村が合併し、印旛郡本埜村(もとのむら)が発足。

2010年(平成22年)3月23日、本埜村は印西市に編入合併。

旧本郷村に入っていた以下の地区には、それぞれに仏刹(ぶっせつ)(仏教寺院)があります(惣深新田飛地以外のすべての地区)。

 ・滝    瀧水寺(天台宗)
 ・龍腹寺  龍腹寺(天台宗)
 ・物木   龍湖寺(曹洞宗)
 ・角田   栄福寺(天台宗)

 ・中根   東漸寺(天台宗)
 ・中根   福聚院(天台宗) 中根の観音堂を所管する
 ・中根   観音堂(天台宗) 福聚院所管で、その東にある
 ・笠神   南陽院(天台宗) 押付新田の薬師堂を所管する 
 ・荒野   安楽院(天台宗)

また、旧埜原村に入っていた地区には、以下の仏刹があります。

 ・押付新田 薬師堂(天台宗) 笠神の南陽院所管で、その北300m
 ・将監新田 蜜蔵院真言宗豊山派



➜  本埜の古刹(2) 龍腹寺(印西市・竜腹寺)

➜  本埜の古刹(4) 栄福寺(印西市・角田)


2014年7月28日月曜日

本埜の古刹(2) 龍腹寺(印西市・竜腹寺)

北総線の印西牧の原駅から歩いていける距離に 本埜の古刹・龍腹寺があります。
所在地は、印西市(大字)竜腹寺626番地。
明治の中頃までは、この周辺は龍腹寺村と呼ばれる地区でした。

龍腹寺の位置
国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものを利用


龍腹寺は、前回取り上げた瀧水寺と同じように、本堂と地蔵堂が離れて建っています。
はじめに本堂の方から見ていきましょう。

龍腹寺本堂がある境内には 門扉が閉まっていて入れません


ここには お堂がありましたが、戦後すぐに深川不動尊に移築されました


本堂からしばらく北に進むと 仁王門が見えてきます。
仁王門の奥に地蔵堂があります。

本堂から少し離れて仁王門があります こうした配置は瀧水寺に似ます


仁王門の右が深い谷となっているのも、瀧水寺薬師堂横の地形にそっくり


仁王門前の左右には 6面に彫られた六観音・六地蔵、右手には大師堂

六道輪廻の思想をあらわす 六観音と六地蔵は 左右一対で置かれることが多いといいます。

仁王門に向かって左手にある 六観音


仁王門に向かって右手にある 六地蔵


龍腹寺には、全部で3つの大師堂があります。
2つは札所で、1つは番外です。

大師堂(1) 印西大師 第三十九番札所


印西大師 第三十九番札所(龍腹寺)の扁額

本家の第三十九番札所は、赤亀山 延光寺 (しゃっきざん えんこうじ)。
その御詠歌が そのまま扁額に書かれています。

 「南無薬師  諸病悉除の  願こめて  詣るわが身を  助けましませ」

 (なむやくし  諸病しつぢよの  久゛わん古めて
               ま以るわかみを  たすけましませ)


仁王門は、わらじや木槌が掛けられているのが特徴的です。

仁王門には わらじや木槌が掛けられています


仁王像二体は修復されてカラフルに塗装もされているようですが、仁王門の中には見えません。

仁王門には 仁王像が二体あるはずですが、よく見えません


仁王門をくぐって先に進むと、地蔵堂があります。

龍腹寺地蔵堂 「延命地蔵尊」という扁額が かかっています


大師堂(2) 印西大師 第二十一番札所


印西大師 第二十一番札所(地蔵堂)の扁額

本家の第二十一番札所は、舎心山 太龍寺 (しゃしんざん たいりゅうじ) 。
その御詠歌が そのまま扁額に書かれています。

 「太竜の  常に住むぞや  げに岩屋  舎心聞持は  守護のためなり」

 (大りうの  つねにすむぞや  げにいはや
              しやしんもんぢハ  じ由古のためなり)


大師堂(3) 印西大師 番外の札所 「大日塚」


印西大師 番外札所の扁額 「大日塚」とあります

印西大師番外の大師堂。
御詠歌は以下のように読めます。

 「有難や  荒野の山の  岩陰で  大師はいまだ  おはしまします」

 (阿り可゛たや  古うやのやまの  以わかげで
              大師はいまだ  おハ志ましま春)


地蔵堂の左手にある 竜腹寺青年館


地蔵堂の右手にある鐘楼


千葉県指定有形文化財の梵鐘 南北朝時代頃の作だといいます


梵鐘についての説明書き


境内にある日枝神社の鳥居 提灯はお祭用


「村社日枝神社」ほか、いろいろと祀られています



追 記 2014.07.30

印西ウエットランドガイドのお仲間をお誘いして龍腹寺を訪ねた後、仁王門下の谷津へと下りてみました。

谷津へと下りていく道の上には 縄が張られていました

割 込 2014.08.14

八千代市を拠点に活躍されている蕨由美さんのホームページに、上記の縄はツジギリである旨が書かれていました。
詳しくは以下を参照してください。

 ➜  さわらび通信 印西市竜腹寺地区のツジギリ

 ➜  facebook 【印西市竜腹寺地区のツジギリ】

この割込 おわり


谷津の景観 1


谷津の景観 2


谷津の景観 3


帰り際に 仁王門前で見たアミガサハゴロモの幼虫
(さわると白い傘を閉じます)


追 記  2014.08.20 アミガサハゴロモの成虫 (印西市・竹袋にて撮影)



➜  本埜の古刹(1) 瀧水寺(印西市・滝)

➜  本埜の古刹(3) 龍湖寺(印西市・物木)

 
 

2014年7月21日月曜日

鎌ケ谷で見られる草本(6) ハルジオン ・ ヒメジョオン

松任谷由実(ユーミン)が 「ハルジョオン・ヒメジョオン」という曲を発表したのは、1978年のこと。

   川向こうの町から 宵闇が来る
   煙突も家並みも 切り絵になって
          (中 略)
   ヒメジョオンに埋もれて (略)
   土手と空のあいだを風が渡った
          (後 略)

なかなか しみじみとした いい歌です。


「ハルジョオン」は「ハルオン」とも呼ばれます。
百科事典でも、小学館のものは「ハルジョオン」、平凡社のものは「ハルジオン」を見出し項目としています。
手持ちの植物図鑑を見ると、見出し項目に 両方が併記されているものがあります。
国語辞典は、どちらかを見出し項目とし、他方を別名としてあげています。
ここでは「ハルジオン」という呼称の方を使うことにします。
( 追 記 2014.07.28 ) 
この段落は、わが自然観察の先生であるA氏の助言により追記しました。


さて、このハルジオン と ヒメジョオンですが、ともに キク科 ムカシヨモギ属 であり、遠目には とてもよく似て見えます。
しかし、花が咲く時期が違っているうえ、よく見ると花などの形が異なっているので、区別はそう難しくありません。

ハルジオン(春紫) はその名のとおり、春に咲きます。
名前に「紫」とつきますが、白い花のものも多く見られます。
千葉県北西部で 4~5月に見られるのはハルジオンです。

ヒメジョオン(姫女)は、6月の中旬以降に花が目立ち始めます。
夏の花だといってよいでしょう。

見なれると、両者は花の花弁のつき方がとても異なっていることに気づきます。
ハルジオンの花は、花弁(舌状花)が細くて糸状に見え、全体的にモシャモシャとした感じです。

ハルジオン(春紫)の花 花弁が細かく糸状です

一方、ヒメジョオンの花は、花弁(舌状花)が一枚一枚はっきりと分かれて見え、やや菊の花に似ています。

ヒメジョオン(姫女)の花 花弁の一枚一枚がはっきりしています

どちらか判別できないときには、茎を折ってみるとわかります。
春に咲くハルジオンの方は、茎がパイプ状で中がスカスカです。

ハルジオンの茎は、中空です


ヒメジョオンの茎は、中が白い髄で詰まっています

ハルジオンとヒメジョオンの違いについては、以下のページに詳しく書かれていて、大変参考になります。

 ➜  はやしのなか ハルジオンとヒメジョオンの覚え方と見分け方

また、以下のページでも簡潔に説明されており、見事です。

 ➜  花盗人の花日記 ハルジオン   ヒメジョオン


以下にハルジオンとヒメジョオンの写真を載せます。
どちらも花の色が一色ではないことに注目して見てください。
まず、ハルジオンから。

白い花のハルジオン 1


白い花のハルジオン 2


紫色の花のハルジオン 1


紫色の花のハルジオン 2


以下は ヒメジョオンです。

道端で繁茂するヒメジョオン


道路脇に つらなって咲くヒメジョオン


白い花のヒメジョオン


ピンクっぽい色の花をつけたヒメジョオン



追 記 2014.10.12

ヒメジョオンの花が 10月の上旬だというのに花を咲かせていました。
花期が、なんと半年近くにわたっています。

2014.10.08  鎌ケ谷市制記念公園近くで撮影