2013年11月12日火曜日

鎌ケ谷の大師堂(8) 柏市郷土資料展示室 「送り大師」展

開催前からずっと楽しみにしてきた 東葛・印旛大師講の「送り大師」展をようやく見にいけました。

「送り大師」展の案内チラシ

会場は、柏市郷土資料展示室(柏市沼南庁舎内)です。
場所は、船取線と国道16号線が交わる大島田(おおしまた)交差点のすぐ近くです。

下の案内図は沼南庁舎前に置かれているものですが、旧沼南町の町域が一目でわかる便利な地図でもあります。

柏市郷土資料展示室は 沼南庁舎内にあります

沼南庁舎はきれいな目立つ建物ですので、すぐにわかります。
下の写真の右手には駐車場があります。

柏市沼南庁舎  2005年に沼南町が柏市に編入されるまでは沼南町役場


こども図書館の2階にある郷土資料展示室 写真左上は万灯(まんどう)


1階の入口 階段をのぼると郷土資料展示室 エレベーターもあります


2階の郷土資料展示室 中は「展示室」のイメージとは違う広いスペース

前置きが長くなりました。  それでは、展示のようすをご紹介します。

左右のパネルの反対側は、他の企画展示と常設展示のスペースです


向かって右の壁面 ガラスケースには多くの古文書が展示されています

展示されている古文書の多くには翻刻が付されていて立派だと思いました。
展示に至るまでの準備の大変さが察せられます。

向かって左の壁面 女人講の絵馬等


女人講による善光寺参りなどで満願達成後、奉納された絵馬

東葛・印旛大師講とは直接的には関連はないのでしょうが、明治・大正時代の女人講による社寺参詣の絵馬が展示されていて興味深かったです。
絵馬に記された女性の名前を見ていると、同じ名前がいくつも見られるではありませんか。
諸国の社寺へと女性たちが連れ立って出かけていたことを知り、感心させられました。

「送り大師」巡行時の行衣(ぎょうえ)や法螺貝

それとともに、多くの人々にとっては四国八十八ヶ所を回ることなどできなかったからこそ「東葛・印旛大師講」が開創されたのだと、その時代背景に思いを馳せました。
四国は遠く、遍路の旅は 1,200kmにも及ぶ長大な巡礼だといいます。

なお、「東葛・印旛大師講」の成立の経緯については、本企画展の小冊子 P.1~2 に詳しく書かれています。

本展示の圧巻は 正面に掲げられている「送り大師順路絵馬」

正面の奥には、明治5年(1872年)に描かれた「送り大師順路絵馬」が展示されています。
上の写真中央にある2枚の絵馬がそれですが、2枚の絵馬の内容は同じものです。
右側のオリジナルの古い絵馬(柏市泉・龍泉院所蔵)を描き直したものが、左側にある絵馬(柏市大井・福満寺所蔵)です。
描き直された絵馬は非常に鮮明で、見ていて引き込まれます。

「送り大師順路絵馬」の鎌ケ谷周辺部分

絵馬には、鎌ケ谷にある第41番札所の宝泉院と第10番札所の粟野千寿堂も載っています。

「送り大師順路絵馬」の全体をご紹介できないのがとても残念です。
ぜひ、実物をご覧になってください。
「送り大師」への想像がふくらむことでしょう。

奥から入口に向かって見たときの展示

要所要所には簡潔な説明が掲示されていて、大変参考になります。
私にとっては、初めて知ることが多かったです。

なかには鎌ケ谷の札所についてふれている説明があり、大きな収穫となりました。

鎌ケ谷の札所に関する重要な記述

東葛・印旛大師講の第10番札所は粟野にあり、第16番札所は軽井沢にあります。
上の写真の説明には、ふたつの札所が鎌ケ谷に移転した経緯が書いてあり、大変参考になります。

第12番札所の初富稲荷神社は明治に入ってからの創建ですので、江戸期の第12番札所はどこにあったのでしょう。

「送り大師順路絵馬」の藤心周辺部分

「送り大師順路絵馬」を見ると、「ふじ心」と地名が書かれた近くに「十二薬師堂」という札所があります。
ここから移転されたのでしょうか。
この「薬師堂」は、今も残っているとするなら、いったい どこにあるのでしょう。

また、第41番札所の宝泉院も いつから札所となったのでしょうか。

調べてみたいことが 次から次に湧いてきます。
そして、江戸期に12番札所のあった付近を実際に歩いてみたいと思うようになりました。


とまれ、鎌ケ谷の札所に関する情報も得られて、行ってきた甲斐のある「送り大師」展でした。
東葛・印旛大師講に関するこうした展示は、今後しばらく開催されることはないでしょう。
今年(2013年)の12月23日(月・祝日)までの開催です。
ぜひ、多くの皆さんに本展示を見にいっていただきたいと心から願います。

「お練り込み」で用いられる万灯(まんどう)


付 記


「送り大師」展は、期待に違わぬ素晴らしさでした。
東葛・印旛大師講の概要がよくわかる展示がなされており、しかも展示されている品々はふだん見ることができないものばかりで、いつまで見ていても見飽きません。

また、この企画展用に18ページからなる小冊子の資料が会場に用意されており(無料)、必見の価値があります。
「送り大師」についての解説と古文書の翻刻が載っています。
これを持って展示を見るとさらに理解が深まることでしょう。


企画展用資料の表紙

資料前半の解説部分は、碩学 椎名宏雄(しいな こうゆう)師によるもので、簡にして要を得ています。
これ以上の解説は望めないでしょう。
本展示についての全体的なご指導もなさっているようです。

師は、柏市 泉にある曹洞宗・龍泉院の住職にして、柏市文化財保護委員会副会長をされています。
また、曹洞宗総合研究センター客員研究員もなさっているようで、著書も多く出されています。


➜  鎌ケ谷の大師堂(7) 2013年 東葛印旛大師「送り大師」巡拝 結願 萬福寺(柏市増尾)

➜  鎌ケ谷の大師堂(9) 2014年の東葛印旛大師「送り大師」日程