2013年12月23日月曜日

鎌ケ谷で見られる木本(8) ゴンズイ

ゴンズイの若葉 2012.04.22 鎌ケ谷市・粟野の森にて撮影

ゴンズイ(権萃、学名  Euscaphis japonica (Thunb.) Kanitz)は、ミツバウツギ科ゴンズイ属の落葉小高木です。
暖地の 二次林 などに生え、 雑木林 の構成要素の一つとなっています(本記事末尾の「付記」参照)。

属名の Euscaphis は、ギリシア語で「eu(良) + scaphis(小舟)」という意味だそうで、果実が赤く色づいて美しいことから名づけられたようです。
種小名の japonica は、言わずもがな「日本の」という意味です。

学名に付いた「(Thunb.) Kanitz」の意味ですが、「(Thunb.)」の部分はスウェーデンのウプサラ大学の植物学教授 ツンベルク(Carl Peter Thunberg : 1743 - 1828)によって初めて命名されたことを示しています。

その後ろの「Kanitz」の部分は、その後、ハンガリーの植物学者 カニッツ(August Kanitz : 1843 - 1896)により 現在のようにゴンズイ属に移されたことを示しています。

ゴンズイの袋果 2014.08.20 印西市・竹袋にて撮影

ツンベルク(スウェーデン語では「トゥーンベリ」と発音するようです)については、Wikipedia に興味深いことが書いてあります。

・ウプサラ大学のカール・フォン・リンネに師事して植物学、医学を修めた。
・フランス留学を経て、1771年オランダ東インド会社に入社。
・1775年(安永4年)8月にオランダ商館付医師として出島に赴任。
・翌1776年4月、商館長に従って江戸参府を果たし徳川家治に謁見。
・わずかな江戸滞在期間中に、吉雄耕牛、桂川甫周、中川淳庵らの蘭学者を指導。
・1776年、在日1年で出島を去り帰国
・1781年、ウプサラ大学の学長に就任。
・在日中に箱根町を中心に採集した植物800余種の標本は今もウプサラ大学に保存されている。

リンネの弟子にして、日本に縁のある人だったのですね。
この時期から明治のはじめにかけて、ヨーロッパから日本に赴任し、後に大成した学者や軍人が多いように思います。

トゥーンベリについては、以下をご覧いただけると幸いです。

➜  ウプサラ大学のサイトからの資料 (2) ツンベルク略伝


裂開した果実 2012.10.31 印西市・松虫寺近辺にて撮影

ゴンズイの実は、実にしゃれた色合いで目をひきます。

果実は袋果(たいか)で、長さ約1センチ、果皮は赤色を帯びていて、裂開(れっかい)して光沢のある黒色の種子を露出します。
「袋果」とは、「乾果」のうちの「裂開果」の一種であり、成熟すると果皮が乾燥し,縦に裂開して種子を出す実をいいます。

ゴンズイの実を手に取ってさわってみると、果皮の厚みや種子の堅さが感じられます。


葉の色が赤みを帯びています 2013.12.07 市川市・大町公園にて撮影

ゴンズイの葉は、秋が深まってくると赤みを帯びてきて、落葉します。
下の写真にあるように、落葉した後も実は枝についたままです。

以下の2枚の写真は 同じ日に、同じ場所のゴンズイの木を撮ったものです。
このゴンズイの木は、市制記念公園から市道2130号線の坂を下って粟野の森に向かって進んでいくと、国道464号線に入る道の手前に見えてきます。
「ゴミ捨てを禁ずる」の看板が目印になります。

葉は散っています 2013.12.14 鎌ケ谷市・市道2130号線沿いにて撮影


枝が道の上に 2013.12.14 鎌ケ谷市・市道2130号線沿いにて撮影


ゴンズイという和名の由来ですが、海水魚のゴンズイ(権瑞)と同様に「役に立たない」という意味だという説や、樹皮がこの魚に似ているからという説などがありますが、定説はないようです。

2013.12.13 松戸市・21世紀の森と広場にて撮影


付 記
二次林については、環境省 自然環境局の『里地里山保全再生計画作成の手引き』にある「2-2 里地里山を活用する」に詳しく書かれており参考になります。



追 記 2015.09.23

ゴンズイの冬芽と葉芽の写真を載せておきます。

ゴンズイの特徴的な冬芽 2015.01.27 粟野の森で撮影


ゴンズイの葉芽 2015.03.24 粟野の森で撮影