シュニトケ(Alfred Garyevich Schnittke:1934〜1998)は、ショスタコーヴィチ以降のロシアを代表する作曲家である。
その作風は、とてつもなく暗い。
しかし、その音楽のもつ暗さに引き込まれてしまう。
しかし、初めて「多様式」による作品を聞いたときには、思わず仰け反ってしまった。
〈これは冗談なのか?〉
「多様式」による部分を聞いて呆気にとられなかった人などいるのだろうか?
この一種の様式崩壊感覚とでもよびたくなるものの面白さは、いちど聞いてみないと分からない。
亡き母への祈りを込めた曲だ。
第2楽章は「In tempo di Valse」となっている。
鎮魂にワルツは不似合いのようだが、誰にとっても たった一人しかいない産みの母は、永遠に若く美しい。
最後の第5楽章では深々とした鎮魂の歌が紡がれる。
このピアノ五重奏曲には『イン・メモリアム』(1978)という名の作曲者自身による管弦楽編曲版がある。
しかし、ピアノを用いたオリジナルの方が何倍もよい。
ピアノでしか表現できなかったものが、管弦楽版では すっかり失われてしまっているのだ。