2019年4月14日日曜日
私の好きな作曲家(16) ライヒ
スティーヴ・ライヒ(Steve Reich:1936 生)は、アメリカの作曲家である。
ドイツ系ユダヤ人なので、「Reich」は「ライヒ」と発音されることが多い。
ここでも「ライヒ」と読むことにしたい。
シュニトケ、リゲティ、ライヒ―― これらの20世紀後半の音楽の革新者たちは、みな〈ユダヤ人〉である。
彼らが〈ユダヤ人〉であること、優れた作品を残したこと ―― これらには深い関係があるに違いない。
ライヒの代表作『ディファレント・トレインズ』(Different Trains 複数形であることに注意:1988)には、高いメッセージ性が込められている。
この曲は三部構成となっている
1. アメリカ ―― 第二次大戦
ライヒ自身の家庭教師の女性の音声が、サンプリングにより切り出されて用いられている。
第二次大戦時、生き別れた母親に会いにいくために、ライヒは この家庭教師の婦人と汽車に乗ったのだそうだ。
これがヨーロッパを走る汽車であったら、〈Different Train〉はどこに向かったのだろうか?
きっとアウシュヴィッツの強制収容所〔ホロコースト〕へと直行したはずだ。
2. ヨーロッパ ―― 第二次大戦中
ホロコーストの生き残りの音声が使われている。
戦時の様子が目の前に浮かんでくるようだ。
息苦しい緊迫感に満ちている。
3. 第二次大戦後
戦時中、人類の歴史には大きな汚点が記録された。
この『Different Trains』も、戦後のいまへとつながる そうした記録の一部なのだ。
本作は、1989年にクロノス・カルテットとともにグラミー賞のクラシック現代作品部門を受賞している。
現代の作曲家たちに委嘱という形で貢献を続けている Kronos Quartet のメンバーに 惜しみない賛辞を贈りたい。