ベルク(Alban Berg:1885〜1935)の音楽は、とりわけ美しい。
その響きは、武満 徹 ら 後世の作曲家に直接的な影響を与えている。
私が初めてベルクの作品を聞いたのは、NHKのFM放送を通じてだった。
カール・ベーム指揮、ウィーン国立歌劇場管弦楽団による『ヴォツェック』(1921 作曲)がそれである。
オーストリア放送協会(ORF)提供の録音テープによるものだった。
『ヴォツェック』の最終盤には 子どもたちだけが登場する。
―― " Ringel, Ringel, Rosenkranz, Ringelreih'n "
親の死を知らずに遊ぶ子どもの姿が、頭の中にこびりついて残った。
これも、かれこれ50年も前の話となってしまった。
話の内容は、下世話なイタリア・オペラであるマスカーニ作曲『カヴァレリア・ルスティカーナ』(1890 作曲)などのヴェリズモ・オペラ(verismo opera)と同様なものであり、人間はどこでも似たものであると思わせられる。
ベルクの死によって未完となったオペラ『ルル』(1935 未完)においては、ロンドンの娼婦となるルルが主人公であり、切り裂きジャックまで登場する。
こうしたものへの嗜好と、その美しい音楽は表裏をなしているのだ。